「これまで元気に毎日1時間以上散歩していた愛犬がすぐにバテて歩くのをやめてしまう。」
「今まで食べていたドックフードを食べなくなってしまった。」
「夜鳴きがひどく私たちがねられない。」
動物病院に勤務していると、こんなお悩みはよく見聞きします。
私たち人間と同じく生物であるなら老化するのは当たり前です。
今まで通りの生活をするのではなくライフステージに合った生活の仕方を知り、飼い主であるあなた方が愛犬の現状を把握することでシニア期の以降のQOL(生活の質)を高めることができます。
QOLを怠ったがために愛犬に苦しい思いをさせることもありますし、高い治療費・薬代を払い続けなければなくなる恐れもあります。
これをしておけば大丈夫という考えではなく、
あの時あれをしておけばよかったという後悔をしないために、
今からできるor事前にできるライフステージごとの愛犬への接し方
をご紹介していこうと思います。
老化とは何か?

「愛犬の年を取ってだんだん弱っていく姿を見ていたくない」
「いつまでも元気でいてほしい」
こういった感情を抱く飼い主さんは少なくありません。
歳をとり老いていくのは言い換えれば、生きている証でもあります。
しかし歴史を振り返ると、不老・長寿・不死を目的として古代の権力者が研究し求めていたことを知っている方も多いでしょう。
それはにはやはり、
老化による衰えから来る死の恐怖が大きかったのではないでしょうか?
そうはいっても生きているならば終わりがあるのも道理で、覆しようがない自然の摂理です。
そこに人も動物も区別はありません。
しかし終わりが来るとわかっているならば、何もしなくてもいいかと言われるとそうではありません。
それまでの接し方で一つで余生(シニア期)を豊かに過ごすことができる可能性は十分になるのです。
まずは、あなたの愛犬が人の年齢に置き換えると何歳であるかを知ってみてはいかがでしょうか?「あなたの愛犬・愛猫の年はいくつ?そして人間に換算すると・・・」
老化の特徴には何があるの?

愛犬が老化してくると現われる特徴には、大きく分けて3つの変化があります。
➀外見の変化
これは、飼い主自身だけでもわかる変化で、眼が白く濁る・毛艶が悪くなるなど愛犬をパッと見ただけでわかる変化です
➁体の中の変化
一目ではわからない変化で、口臭がある・目が見えない・耳が聞こえない・心臓などの内臓機能の低下が挙げられます。
これらの変化にいち早く気づくためには、定期的に動物病院に健康診断を受けに行ったほうがいいでしょう。
③行動の変化
歩きたがらない・今まで食べていたご飯を食べない・徘徊する・睡眠時間が増えたなど毎日愛犬と接していれば気付きやすい変化です。
しかし、これらの変化も老化によるものなのか、病気によって引き起こされているものなのかは獣医師や動物看護士などの動物に携わる方でないと判断できないと思います。
自分一人で判断するのではなく、周りの愛犬家の知人に話を聞くことや、動物病院で開かれるシニア教室に参加して獣医師と一緒に考えるのも、愛犬のQOL(生活の質)を高める一つの手段であると思います。
いつ頃から対策したらいいの?
「あなたの愛犬・愛猫の年はいくつ?そして人間に換算すると・・・」の記事でお話していますが、基本的に小型犬・中型犬12歳くらい、大型犬では8歳くらいで人で言う「シニア期(65歳以上)」に入ります。
高齢ステージ | 年齢 | 対策法 |
中年犬 | 7~10歳 | 老化に備える アンチエイジングを行う |
シニア犬(前期) | 小型犬・中型犬:12歳~ 大型犬:10歳~ | 老化を遅らせる 愛犬の環境を整える |
シニア犬(後期) | 小型犬・中型犬:16歳~ 大型犬:13歳~ | 老化を受け入れる 介護の準備をする |
上記の表を見ていただくとわかりやすいと思いますが、考え方は人に対するものとほとんど差はないです。
中年のうちに老化に備えるため、
病院で検査を受け潜在的な病気の有無を確認するとともに、アンチエイジングとして室内でもできる足腰に負担のかからない遊び・運動をすることで筋肉の衰えを抑えます。
シニア期に入り老化の徴候が見え始めたなら、愛犬の環境を変えていかないといけません。
家具の配置を変えたり、フローリングの床にカーペットを敷き足が滑らないようにするなどの対策が必要となります。
シニア期の後期に入ると、愛犬は今まで通り体を動かすことはできないでしょう。若いころと同じように遊んだり散歩をすると老化を加速させる可能性も出てきます。
寝たきりになれば床ずれができますし、ご飯も普通には食べてくれません。
シニア期の対策法には何があるの?

シニア期に起こる行動・変化としては、
- 夜鳴き
- 徘徊
- トイレ以外での排尿・排便
- 寝たきり
- 食事・飲水量の減少
などが挙げられます。
夜鳴きをするときには、夜に十分に寝れる環境を作ることが重要になります。
日中に目を覚まし、十分に愛犬とコミュニケーションを取ると夜の変な時間に目を冷ますこともなくなるでしょう。
認知症やストレスによる徘徊行動がでるなら、その行動を押さえつけては行けません。
しかし、そのままにしておくと当然リスクがおこります。家具にぶつかり怪我をする・目を離したすきにどこ変えいってしまうなど、飼い主にとっては冷や冷やすることもあるでしょう。
そういう時は、愛犬が満足するまで歩かせてみるのも手でしょう。といっても飼い主が四六時中見ているわけにも効かないでしょう。
そういったときにはビニールプールなどサークル上になっていてぶつかってもケガしないスペースを用意してそこに愛犬を入れてあげると、自由に歩き回ることができます。
トイレ以外で排尿・排便をしてしまうなら、原因を探ってみましょう。
散歩のときに十分におしっこはしていますか? 泌尿器系に病気はありませんか?
原因がわからないときは、ひとまずオムツをしてあげるのもよいでしょう。
寝たきりになれば自分で体を動かすことはできませんし、床ずれもでき、おしっこやうんちもしたままになってしまいます。体は不衛生で一人では満足にご飯も食べることもできません。
そういったときにこそ、飼い主であるあなたが体をふいたり動かしたりする介助の知識が必要となるでしょう。
まとめ
人も動物も年を取り老いていくものです。
日本は今高齢化社会の真っただ中ですが、それはあなたの飼っている愛犬・愛猫も同じです。
医療技術は発達して長生きできるようになりましたが、それでも体は若いままではありません。必ずどこかで介護や介助を必要とするときが出てきます。
病院がすべてを請け負ってくれるわけではありません。あなたの家で最後まで面倒を見なければなりません。
そんな時になって慌てるのではなく、事前に準備し心構えをしておけば愛犬にとってあなたと出会ってからの一生はかけがえのないものとなるでしょう。