こんにちは!すぐる(@Curiosity_sgr)です。
あなたは地域猫という言葉を聞いたことはありますか?
まだまだ世間一般に広まっているとは言えませんが、人と猫の関係はここ十数年のうちにかなり変わってきました。
その関係が特定の飼い主を持たず、ボランティアや近隣住民の手で世話・管理をする「地域猫」という存在です。
地域猫は野良猫とは違うの?という疑問の声もあるでしょうが、それは「【地域猫活動】野良猫の問題を解決する地域猫について知ろう!」でお話しています。
ここ十数年のうちに地域猫がだんだんと増えてた一方で、日本では「地域犬」は存在しません。
地域猫がいて地域犬がなぜいないかあなたは知っていますか?
その答えをこの記事で、獣医師である私が地域犬がいない理由を考察していきます。
そもそも地域犬ってなに?野良犬とは違うの?
ここ十数年で地域猫活動というものが盛んになり、地域猫の数が増えてきました。
地域猫活動とは野良猫を地域の環境問題としてとらえて、地域住民・ボランティア・行政の三者が協力しあって、飼い主のいない野良猫を適正管理しつつ徐々に数を減らしていき、暮らしやすいまちづくりを目指していくという活動のことです。
そして地域猫とは、野良猫の鳴き声や糞尿・ゴミあさりなどの問題を解決するために地域猫活動で不妊去勢手術を受けた猫たちのことで、特定の飼い主がおらず近隣住民やボランティアによって世話管理されています。
つまり地域猫を例にすると地域犬とは、野良犬を不妊去勢手術をして地域に放ち特定の飼い主を持たずボランティアや近隣住民で世話・管理している犬ということになるのです。
地域犬が日本にいない理由は狂犬病予防法にある
前述したとおり、地域犬とは、野良犬を不妊去勢手術をして地域に放ち特定の飼い主を持たずボランティアや近隣住民で世話・管理している犬です。
しかし、日本には地域犬はいません。
そもそもの野良犬の数が海外諸国と比べると日本は圧倒的に少ないのです。
野良犬がいない理由としては、
狂犬病予防法が施行されたことが一番の理由でしょう。
この狂犬病予防法が昭和に施行されてから多くの野良犬が捕獲されてきました。
そして今の日本ではほとんど野良犬が見かけられなくなったのです。
狂犬病予防法の狂犬病ってどんな病気なの?
狂犬病とは狂犬病ウイルスによる感染症で病原体は神経系をおかし、性格に変化や行動の異常を起こす病気です。
狂犬病ウイルスはすべての人を含む哺乳類に感染することができ、狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれることで、唾液に含まれているウイルスが体内に入り感染します。
一度発症してしまうとほぼ100%の確率で死亡する恐ろしい感染症です。
医療の発展した現在であっても狂犬病ウイルスに効く特効薬は開発されていません。感染動物を見つけ次第、摘発淘汰しています。
1950年代以前は日本国内でも多くの犬が狂犬病と診断され、ヒトも狂犬病に感染し死亡していました。
当時の状況を何とかしようとして狂犬病予防法が施行され犬の登録、予防注射、野犬等の抑留が徹底されるようになり、わずか7年という短期間のうちに狂犬病を国内から排除することが出来たのです。
そのため日本国内ではもう数十年狂犬病の発生はありません。しかし海外に旅行に行かれら際にその国の野良犬に噛まれ狂犬病を発症し死亡した事例はいくつかあります。
そもそも今の時代に狂犬病予防法はいるの?
先人たちの努力により、今現在まで日本国内で狂犬病の発生はありません。
そのため、日本国内での犬の狂犬病予防接種は必要ない、もしくはワクチン接種間隔をあけるべきだといった意見も多くなってきています。
しかし日本を周囲の国々ではいまだに狂犬病が蔓延しています。WHO(世界保健機関)の統計によると、いまだに年間55,000人(うち、アジア地域31,000人、アフリカ地域24,000人)の方が狂犬病により亡くなっていると推測されています。
そのため、日本はいつ狂犬病が侵入してくるかわからないため万が一に備えた対策が必要となっているのです。
ですが、2017年に東京大の杉浦勝明教授(獣医疫学)らの研究チームが「犬の狂犬病ワクチンの効果は2~3年は持続する可能性がある」と国際獣医学誌「プリベンティブ・ベタリナリー・メディスン」に発表し、話題を呼びました。
日本でもあと数年のうちに狂犬病ワクチンの接種方法が見直されることでしょう。
狂犬病予防法がなければ地域犬は増えるのか?
話は戻って地域犬についてお話していきます。
今の日本では狂犬病予防法があるため野良犬は保健所などの捕獲員によって捕まえられています。そのため野良犬の数は増えることはありません。
野良犬がいなければ、特定の飼い主を持たずコミュニティーで世話・管理する地域犬という存在は必要ないと判断され、地域犬活動といった活動はされていません。
もし仮に狂犬病予防法がなく野良犬が増えすぎて問題が出たため、地域猫活動のような活動が盛んになったとします。
そのとき、地域犬が増えるかと言ったら私は増えないと考えます。
そもそも犬は集団で狩りをして生活をするオオカミを祖先に持っています。そのためいくら不妊去勢手術を受けていても、地域猫のようにリードも首輪もつけず外に放すことはおすすめできません。
犬は本来群れを形成する生き物です。人の手を離れれば犬同士で群れを作りだすでしょう。そうなれば群れ同士の争いもおき鳴き声の問題はなくなりません。
さらに犬は猫と違い、ウンチやおしっこに砂をかけることはありません。糞尿を回収しなければ公園や道路などにあふれ、悪臭やハエなどの害虫が増える原因となるでしょう。
もし糞尿の対策が取られ多としても、飼い主のいない犬が野放しにされていたら小さいお子さんを一人で外に出したくないという親御さんも多いでしょう。
- 犬はオオカミを祖先に持つ肉食動物
- 猫よりも体格が大きい(犬種による)
- 犬は本来群れを形成する生き物
- 群れができれば縄張りができる
- 縄張りを主張するためにマーキングがされる
- 犬は猫と違い糞尿に砂をかけないため悪臭や害虫の問題がでる
- 避妊去勢をしていれば増えることはない
- 縄張りに入ったら人であろうと威嚇される
- 飼い主のいない犬がうろついていたら噛まれる危険がある
- ノミやダニ、感染症を広めるリスクがある
こういった理由から私は地域犬が増えることはないと考えています。
まとめ
特定の飼い主をもたない地域猫はだんだんと地域に愛されて増えてきています。
これは本来猫がもっている性格や習性が比較的人の手でコントロールできるためでもあります。
しかし犬の場合は猫よりも体格が大きく群れで縄張りを形成するため、人に威嚇をしたり糞尿の問題が解決できないため、地域犬という存在が世間一般に浸透するには時間と手間がかかると考えられます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
この記事では「日本に地域猫がいても地域犬がいない理由。野良犬と地域犬はどう違うのか?」について考察しお話してきましたがいかがでしたでしょうか?
地域に愛される犬が増えるには多くの課題があります。その課題をひとつひとつクリアして地域犬といった存在が多くの人に受け入れられる未来があるといいですね。